ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
「あれ、また……ちが、泣くつもりなんか……」

 言いかけて思う。泣くつもりなんかなかった……ことない。ずっとずっと泣きそうで、泣きたくて……でも安積さんの前では泣いちゃだめだと、何度も何度も思って……それでも泣いてしまった日もあったけれど。

「泣かずに……いたかった……安積さんの前では、泣くのだけはせずにって」

 困らせたくなかった、罪悪感だって抱かせたくなかったし、同情も情けも……。

「泣いちゃった日も……あったけど……っ、でもっ……泣かずにいようって……」

 そこで言葉が切れたのは抱きしめられたから。柔らかなニットが肌に触れる。包み込まれるとフワッと熱が揺れるようでその動きと一緒に香るタバコの香りが胸を突いた。

「泣いてよ。どんな思いも涙も……俺の前でだけこぼして」

「……」

「もう……俺以外の男の前で泣かせたくなんかない」

 (どうしたらいいの……そんな言葉……伝えてもらえると思ってなかったのに……)

 抱きしめられる腕の中、安積さんの掌が頭を撫でて髪を指先がすくっていく。トクトクと速い速度の鼓動が耳に届く。安積さんの鼓動が高鳴っている、それがわかるほど近くにいる。

 嘘なら私も――。
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