ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 すでに体も脳もキャパオーバー超えだ。

 そんな時に救いの電話が鳴った。
 安積さんのズボンの中から鳴り響く軽やかなメロディ……鳴り止まないところから着信だとわかるのだが。

「んんっ、ん!」

 キスが止まらない。

「ぁ、んん!」

 腕を軽く叩いて、ニット引っ張って声にならない代わりに必死で態度で示すのだが……キスが……。

 (嬉しいけど、困るー!)

 腕の中で身悶える私にやっと諦めてくれたのか。唇が離されて安積さんはめんどくさそうに言葉を吐いた。

「……うるさいな。誰だ」

 やっと解放された唇で盛大な息を吐く私。ハッキリ言って酸欠状態。キスでこんなに息が乱れる経験を初めて知って大人の階段を登った気がした。私が元彼としていたキスなんかお子ちゃまだった。

「……柳瀬? もしもし」

 とてつもなく不機嫌そうな声で電話に出る安積さん。そんな姿を初めて見てなんだかくすぐったい。

 (なんか可愛い……)

 邪魔されて拗ねた感。そんな露骨に態度に出す人だったなんて知らなかった。また新しい好きを見つけて胸がくすぐられていたらなんだか安積さんの放つ声に不穏感が増してきて……。

「……え? ええ?!」

 最後は驚きと不満が混じるような荒れた声をあげていた。
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