ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
「……行きたくない」

 中国のトラブル。柳瀬部長の指示で当然召集を受ける安積さんは項垂れるように玄関にいる。それのせいで明後日の出発は明日に早まりそうで。

「お仕事なので……仕方ないです」

 本音は寂しい、行ってほしくない。でもそんなことは言える訳ない。三ヶ月の出向はもう決定事項だ。
 
「俺がしないといけないのかな」

 そんな子供みたいな発言をするから思わず吹き出してしまった。中国まで立ち上げのために引っ張り出される人が何を言っているのだ。

「ふふ、そんな……安積さん以外誰がするんですか? 求められてる人が何を言うんですか。安積さんが必要なんです」

「……」

「本当に……三ヶ月、無理しないでくださいね?」

 振り回されて体を酷使されたらと思うと心配だ。そんな思いで声をかけたら抱きしめられる。

「三ヶ月……俺が耐えられるかな」

「え?」

「もう明日から連れて行こうか」

 (え)
< 235 / 248 >

この作品をシェア

pagetop