ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 空港で待つ私はただソワソワとしている。


(飛行機って本当にちゃんと飛んで着くのかな……安積さんの乗る飛行機だけトラブルが起きたり、事故に巻き込まれたりしたらどうしよう)

 そんな不吉なことばかりを想像して余計にソワソワし続けていた。中国との時差は一時間ほどしか変わらないので生活スタイルがズレることはあまりなく、こまめに連絡を取り合えて不安に襲われることはなかった。

 ただ会いたい気持ちはどうしても募り、寂しさがゼロになどなるわけがない。そんな時間を過ごしてきてやっと会える、その喜びを何に表せばいいのか。体内から溢れそうな興奮が止まらない、そう思っていた時だった。


 ――ぎゅっ。


「え」

 背後から伸びてきた腕に包まれて背中に熱を感じる。

「ただいま」

 耳元に囁かれる言葉に心臓が飛び跳ねた。

「お、かえりなさい……」

「はぁ……疲れた」

 そう言ってぎゅっとまた強く抱きしめられて私の胸も締め付けていく。

 抱きしめられる幸せ、でもこの時思った。
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