ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 上司相手にすごい口を利いてしまったが後の祭りだ。そう言いたくもなった。

「違います! ひとりの男性としてちゃんと認識してお慕いしております!」

「……ちょ……」

「ずっと! それこそ安積さんは出会った時からずっと素敵です! 時間を重ねるほどときめいて怖くなるなんか一度もない。むしろ好きになっていきすぎてそれが怖いほどで……」

「ちょっとストップ!」

 いきなり言葉を遮断されて私もハッとする。目の前の安積さんが頬を染めていた。

「ごめん、そこで止めて。ちょっと聞くメンタル出来てない」

 自分でも何を言ったかわからないくらい勢い込んで言ってしまった。そこまでおかしなことを言ったのだろうか? そうは思っても勢いは怖い。自分の放った言葉に全く責任が取れないのだから。

「す、すみません」

「いや、うん……えっと、なんだっけ」

 時間を巻き戻すように安積さんが目を泳がせて冷静さを取り戻そうとしている。私もそもそものキッカケを思い出して言葉にした。

「本当にその、大した恋愛をしていないのです。お付き合いした人はたったひとりだけで……もともと片思い歴が長くてしつこく想ってしまうタイプなんですね、私って。だから両想い経験がそもそもなくって」
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