ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~

優しい温もり

 頭をソッと撫でてくれる熱にハッとした。

 安積さんが先ほどよりもずっとそばにいて、触れた熱の正体は安積さんの手の熱だとわかる。安積さんが気遣うように私の頭に触れて言ってくれる。

「無理して話さなくていい」

「無理では……」

「でも辛そうだぞ」

「……」

「ひどいモラハラ男だな」

 呆れたように笑われて、でもその笑いだって私にじゃない。相手を理解できない、そう取れる乾いた笑いだ。
 
 別れる時も散々だった。ひどい言葉を並べられて私がダメだったと言いくるめられて挙句――。

「向こうから振られました。もっと違う女だと思ってた、そんな風に言われたな……」

 だから信じられなくなった、男の人というイメージが元カレで染みついて。

 恋人になったら人が変わるのかもしれない。どうやって向き合って付き合っていけばいいのだろう。どんな言葉を伝えて行動するのが正解か。考える事ばかり、でもどこにも答えがなくて結果。

「男の人が何考えてるのかわからなくて怖い、そう思うようになって……でも」

 入社して出会った、安積さんに。
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