ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 一目惚れをしたわけではない。最初は直属の上司として尊敬してただ真っ直ぐな気持ちで付いて行こうと、それだけの気持ちだった。

「でも安積さんは、ずっと優しかった」

「え?」

「私を否定することもなくって、見守るみたいに支えてくれて……ちょっとつらい日とか、しんどいなって時にちゃんと声をかけてくれて言ってくれました。大丈夫だよって」

 ダメだ、お前が悪い、そんな言葉ばかり浴びるように言われていた私には凍り付いた心には溶けるようで。

 雪解けの春の日差しのように、暖かくてジワリと広がる様な心地よさがたまらなくて……その熱を知ったらそこにだけいたいと思えるほど。

 どこにもいけない、そばにいたい、そう思った。


「好きだって、ちゃんと気づけたのは二年目です。それからもうずっと、安積さんが好きです」

「……」

 ぽろぽろと零れ落ちていく言葉にハッとしたがもう遅い。とんだ告白劇を始めていて今さら赤面した。

「す、すみません……あ、あれ? 何の話だっけ」

「……」

「あ、あ! そうだ! だから私の恋愛遍歴が乏しくて、大人の恋ってどんなものかなって……その、えっと……安積さん?」

「……いや、ごめん。ちょっといろいろ……」

 そう言ってやっぱり照れた顔を大きな掌で隠すようにするから。

(どうしよう……可愛いとか思っちゃう)
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