ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 その元カレは感情起伏のはげしいタイプで基本優しいのに機嫌を損ねると声を荒げるモラハラ系だった。

「俺のこと好きじゃないの? よくそんな言葉を投げつけられて……言いくるめるじゃないですが押さえつけるようなところがあって。私の意見や考えは二の次。まずは自分が満たされることが最優先、みたいなところがある人でした。それでも……」

 好きならそれを受け入れて、私が我慢すればいいのかな。そう思ったらだんだん気持ちを飲み込むようになってしまった。飲み込んだらそれが仇になった。元カレはますます私を押さえつけるような言葉を吐くことになり、いろんなことを制限し始める。

「友達と遊ぶのとか、好きな事を優先すると怒って。私のする勝手な行動は自分を苦しめてくると言われて……普通ならこうするだろう、好きなら当たり前だ、出来ないのがおかしいって……だんだんいろんなことが分からなくなりました。自分のしている行動の正解が分からなくて言われたらそれが……」

 正しいのだと。
 彼氏を思えない私が悪い、好きだと伝える彼氏に応えられない私がひどい、そう言われてそうなのだと思いだした。

「だから……」

「四宮」
 
 そう言いかけた私の頭にソッと熱が触れた。
< 46 / 248 >

この作品をシェア

pagetop