ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 それでも今しがた踏んでしまったグレーゾーンをまた踏むのが怖い。

 それにまだ情けないがそれを知る心構えが私に出来ていないから。

「四宮」

「はい」

「分かっているとは思うが、期限があるんだ」

「は、い」

「三ヶ月、わかってるな?」

 急に上司モード。仕事の話ではなかったはずだが私も自然と背筋が伸びた。

「思い出作り……四宮がしたいこと、思うこと……何でも言ってくれていいよ」

「――え?」

「了承したからには、ちゃんと四宮の気持ちに応えてやりたいと思ってる。それが四宮にしてやれる俺の唯一のことだと思ったから」

「……」

「ぶつけてくれた気持ちに応えてやる」
 
 安積さんはそう言って私を見つめてくる。

「大人じゃなくて、いいんだよ」

「……」

「四宮のしたい恋をしたらいい」

 その言葉に泣きそうになった。
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