ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 それに安積さんは何も言わないからこれは完全にドン引き案件……そう思って固まった。

「いや。よく見てるんだなって……なんか、恥ずかしい」

「本当にすみません……」

 気持ち悪がられるかもしれない、そう悶々思いだしていたら安積さんが吹き出した。

「猫舌はそう。当たり」

「え、あ……やっぱり」

「熱いの飲みたいのは指先冷たいから温めたくて。ほら……」

(え?)

 そう言って安積さんのカップを持たないもうひとつの手が私に伸びてきて、長い指先が私の手に触れた。

「冷え性なんだよね」

「……」

「冷たいだろ?」

「は、い……」

(え、無理)

「四宮はあったかい手だな」

 それは今あなたが急に私に触れるからです、なんて言えない。

「四宮」

「は、はい……」

「俺の家来る?」

 ――心臓が跳ねた。
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