ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
(思いやりがありすぎる……好き)

「四宮はアレルギーとかなかった?動物嫌いとか……今さらだけど」

「大丈夫です。私も猫飼ってました! むしろ猫、大好きです」

 うずうずしているのがバレたのか、そばから離れようとしない私を見て分かったのだろう。

「そうなんだ。なら良かった。でも、出てこないと思うよ?」

 安積さんがニヤニヤしてそんなことを言う。

「ええ? そうなんですか?」

「人見知りもすごくてさ。前の飼い主にひどい事されたのかなぁ……」

 そうなのか……それならゆっくり距離を詰めて私は安全な人間だよって分かってもらうしかないな、は思うもののどうしても気になって覗き込んでしまう。ピクリとも動かず体を小さくして隙間で様子を伺い続ける猫ちゃん。見つめ合う攻防戦が続いていたがフワッとタオルが頭の上に降ってきた。

「とりあえず濡れたところ拭こうか?」

「は、はい……」

 リビングに膝まづく私の傍に安積さんがいる。それに今さら気づいてまた緊張感が舞い戻ってしまった。

「タオル、お借りします……」

「雨、まだ全然止みそうにないよなぁ」

 集中豪雨だと思ってすぐに止むと思っていたが天気予報のアメダスレーダーは警報クラスを叩きだし、雨は弱まる気配がなかった。安積さんは会社までが徒歩圏内で、濡れる覚悟で私を家まで連れて帰ってくれた。
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