ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
「モモって名前は猫が聞き取りやすいんだってネットで拾ったから。あんまり深い意味はないよ」

「そうなんですね……」

 そんな会話をしつつもどうしてもそのモモちゃんが気になってしまう私。人見知りだと聞いているしむやみやたらに声を掛けたり構うつもりはないけれど、明るい場所で出来たら全身を拝見したい。

「安積さんが呼んでも出てこないんですか?」

「普段は呼ばなくてもソファとかにいるよ」

「じゃあ私がいるから隠れちゃってるんですね……」

 明らかにシュンとしてしまってまた笑われて。

「四宮が猫飼ってたなんて知らなかったな」

「私だって安積さんが猫を飼ってるなんて知らなかったです」

「変な誤解してるしな」

「待ってるヤツなんていう言い方されたらだれでも勘ぐって思います!」

 ムキになって言っても結局笑われる。

「柳瀬相手にしてる会話なんかテキトーに決まってるだろ? あいつの言葉をまともに受け止めてたらキリないぞ?」

「それはなんとなくわかってますが……」

 柳瀬さんではなく安積さんの言葉だから真面目に受け止めてしまうのだけど、はなんとか飲み込んだ。そんな中で室内に可愛いメロディ音が鳴って思わずその音に反応すると安積さんが席を立つ。声を掛ける事も出来ずただなんとなく手持ち無沙汰でコーヒーをすすっていると扉が閉まる音がして傍に気配を感じて顔を上げた。

「今日はとりあえず俺の服着て?」

(え)

「風呂、入っておいで」

「……」
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