ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 人は慣れる。

 当たり前のことなどない。

 どんなことも必然であるわけではないのに、当然のことのように受け入れてしまう。それくらい乱暴な生き物だと。

 大きな花火の音を聞いて最初は驚いても、繰り返し鳴れば次第にそれを受け入れて毎回の音にびっくりすることが減っていくように、仕事でも同じことがいえる。

 新しい仕事や重要な案件に取り組む時には緊張感を持って取り組めるが、慣れてくると緊張が薄れる。そこから油断が生じてミスを犯す。だからなるべく部下たちには新しい刺激を与えて日々の業務に気持ちを汲み込めるように仕事をさせてきた。

 刺激があればそこに集中されてしまう。やるべき絶対の業務は日常には散りばめられていて、それは誰かがこなしていかないといけない。

 そのいわばめんどくさいことを四宮は黙って引き受けてくれていた。
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