ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 どうしても拭えない壁を目の前に突き付けたら諦められるだろう、それを逆手に取る気で一番の理由にした。

 そしてなにより最大の逃げ道がある。

「四宮は、知ってるだろ? 俺がもうここを離れる事。日本を離れるんだ」

 そうこぼしたら四宮の眉が八の字に下がって泣きそうになって……胸は痛むもののここで優しさなど見せられない。


(痛みにだって――いつか慣れるんだよ、四宮)


 きっと今だけだ。

 悲しさや苦しみがあってもそれはいつかは薄れて当たり前の痛みに変わるから。
 
 痛みを思い出にすることになるけれど、人はそういう生き物だから……痛みにも慣れてきっとどこかで受け入れていける。


「四宮の気持ち、気まぐれだとしても嬉しいよ。それでもそれには応えられない」


 何が優しさなのかわからない。
 それでも俺は慣れてしまった、逃げることに。

 逃げることで問題から解放される快感を知ってしまったらそれを繰り返して……今では問題に向き合う力がなくなってきた。

 逃げることに慣れてしまった俺が、また誰かを好きになるなんか出来るわけがない。
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