わがまま王子は俺だけのもの

出会わなければ

いつも通りなにごともなく1日が終わろうとしている
放課後の廊下をただまっすぐ歩いて靴箱に向かっていたそのとき──

「『王子ー!!』」

という女子たちの黄色い歓声が聞こえて、引き寄せられるように振り向いてしまった。
そこは弓道部の部室で少し開いた扉から中の様子が伺える…
俺は、とっさに走って逃げた
一刻も早くこの場所から離れないと、これ以上見ると──…

……最悪。

弓道部の横を通っただけなのに、なんであんなものを見てしまったんだ。

周りの女子たちの「王子ー!!」っていう声なんてまるで聞こえていないみたいにあいつは静かだった。
まっすぐに的を見つめて、誰の声も聞こえてないみたいに、ただ弓を引いて──。

……あの顔、ずるい。

淡い茶髪に、キリッとしたタレ目、泣きぼくろ。
長いまつ毛が影を落として、白い肌が弓道着の黒と対比になって映えてて。
なんかもう……全部が、完璧すぎる。

こういうのはもう無縁だと思っていた。
靴箱の近くに力なく座り込んだ…
顔が熱い。胸の奥がざわつく。
最悪。もう、恋とかしないって決めたのに。

頼むから、もう二度と会いませんように――。
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