注意、この脚本は本当です

10話 いざ、県大会

◯市民文化センター、ロビー(朝)
梨里杏「やっぱり会場おっきいな」
蓮「いよいよって感じだな……」
谷口「よく焼き付けておけよ、赤点取ったら見れなかった景色だからな」
蓮「やめてくれ先生……ギリギリだったんだから」
小雪「じゃ、私はタニセンと書類出してくるから、2人は席の確保頼んだ」
谷口「いい席見つけろよー」
梨里杏「はぁい」

小雪と谷口は受付に向かい、梨里杏と蓮はホールに向かった。

◯市民文化センター、大ホール

蓮「真ん中くらいにしとくか」
梨里杏「ここ見やすそうだね」

蓮と梨里杏は席につく。

梨里杏「……あー緊張してきた」
蓮「ラジドラは今日じゃないだろ」
梨里杏「蓮は緊張してないの?」
蓮「してない……って言ったら嘘になるな」
梨里杏「今日は抽選、明日明後日が審査で明々後日に結果発表……」
蓮「改めて県大会の規模のデカさがわかるな」
梨里杏「アナウンスもラジドラも2日目……」
蓮「そうだな」
梨里杏「……今回もやる?」
蓮「?」
梨里杏「はんぶんこ」
蓮「あー……ま、しとくか」

梨里杏は蓮の手を握った。

蓮「絶対、大丈夫。俺たちは全国に行ける」
梨里杏「うん」
小雪「ちょっと2人ともー?ここ会場ですけどー」

小雪と谷口が戻ってきた。
谷口「おーおー、お盛んだこと」
蓮「なっ!?」
梨里杏「な、何言ってるんですか!!」

蓮と梨里杏は顔を真っ赤にしている。

小雪「もしかしてまたはんぶんこしたの?」
梨里杏「あ、えっと……はい……」
小雪「これは幼馴染にしかわからない、ね、タニセン」
谷口「俺に聞くなよ」

小雪と谷口も席についた。

小雪「いよいよだね……」
梨里杏「はい……」
司会「みなさんこんにちは。ただいまから、夏の高校放送コンテスト県支部大会を開催いたします。今回の司会は当番校の……」

司会の声が聞こえると、会場が一気に冷たくなった。ピリッとした緊張感が会場全体に包まれる。

司会「それでは抽選会に移ります。まずは朗読部門です……」

抽選は学校ごとに呼ばれる。

司会「次はアナウンス部門です。二橋高校、緑区高校、南丘高校……」
小雪「呼ばれた、行ってくるね」

小雪はステージに向かい、くじを引く。

司会「南丘高校、門田小雪さん、56番です」
蓮「今回何人だっけ」
梨里杏「えっと……72人」
蓮「結構後半だな……」
梨里杏「ラジドラと被らないと良いけど」
小雪「気にしなくていーよ」
梨里杏「あ、おかえりなさい」
小雪「2人は明日、ずっとラジドラの会場にいて」
梨里杏「え、でも」
小雪「私はだいじょーぶ。それに、最後だからこそちょっと集中したいんだ」

小雪の目が真剣だ。

司会「……次に、創作ラジオドラマ部門です。桜高校、中央高校……」

司会が次々に学校の名前を読み上げる。

司会「……高校、南丘高校の生徒はステージにお越しください」
蓮「行ってくる」
梨里杏「書類もちゃんとある……ね」
蓮「心配すんな」

蓮はステージに向かった。

小雪「1〜3じゃなかったら、ひとまず安心だね」
梨里杏「お願い……審査基準作品にならないで……」

司会「南丘高校、32番です」

梨里杏「え……ほぼ最後」
小雪「40本中32番か……」

梨里杏と小雪が驚いていると、蓮が戻ってきた。

蓮「すまん……まじで小雪の方行けなさそう」
小雪「私の方は気にしないでいいからさ……それより随分ラストの方引きましたねぇ」
蓮「人のこと言えないだろ」

蓮が席につく。

谷口「最初、お前らがラジドラ作るって決めてからごりごり恋愛の脚本仕上げてきたときはがちでビビったな」
蓮「あー……まあ、でしょうね」
谷口「やるな、音無」

谷口が蓮に囁くと、蓮は顔を真っ赤にした。

谷口「そんなお前らが県大会なんてなぁ……」
小雪「生徒の成長に感動する30代独身男性の図だ」
谷口「やめろ」
梨里杏「事実じゃないですか」
谷口「地区大会のときは顧問業務やらテスト採点やらであまり見てやれなかったから……許してくれよ……」

谷口は嘘泣きをしている。

司会「抽選会は以上となります。明日は9時から各部門で審査開始となります。それぞれプログラムに場所が記載されていますので、ご確認ください」
小雪「じゃ、混む前に会場出ちゃおうか」
梨里杏「はーい」

4人は荷物を持ってホールを出た。

◯市民文化センター 玄関(昼)
谷口「お前ら昼持ってきてるか?」
梨里杏「私は帰りにコンビニ寄ろうかと」
蓮「同じく」
小雪「おにぎりだけ持ってきてた」
谷口「よし、じゃあ今からラーメン屋行くぞ」
梨里杏「え、そんなにお金持ってきてないです」
谷口「俺のおごりだ」
梨里杏「え!?」
蓮「かっけぇ……」
小雪「あざっす!」
谷口「ただし俺の行きつけのところだ。文句言うなよ」

4人は文化センターから少し離れたラーメン屋に向かった。

◯ラーメン屋(昼)
谷口「大将〜4人だ〜」
大将「お、なんだ谷口じゃねぇか!こんな時間に生徒と来るなんてさぼりか?」
谷口「ちげぇよ、今日から大会なの。俺はその引率」
大将「がきんちょだったお前が教師になって部活の生徒に昼飯奢る年になるとはなぁ……」
小雪「仲良いんですか?」
谷口「俺が高校生のときから通ってたからな。帰りによく同期と来たもんよ」
大将「お好きな席どーぞ」

平日の昼ということもあり、人はほとんどいなかった。4人は小上がり席を選んだ。

谷口「なんでもいいぞ」
小雪「私醤油ラーメンで」
蓮「俺はチャーシュー麺とライス」
梨里杏「私は塩ラーメンで」
谷口「俺は味噌」
小雪「全員見事にバラバラだ」
谷口「だな。大将!醤油と味噌と塩とチャーシューとライス頼む」
大将「あいよ」
梨里杏「大将さん一発で全部聞き取れるなんて……」
谷口「数十年もやってりゃ、余裕のよっちゃんだろうよ」

4人は談笑しながらラーメンが来るのを待っている。

梨里杏「ついに明日だ……緊張する」
蓮「チャーシュー麺食いきれるかな……」
谷口「腹いっぱい食え」

話していると、ラーメンが来た。

大将「はいおまち。醤油と味噌と塩とチャーシューにライス。それとこれは俺からのサービスだ」

頼んだものにプラスで、からあげがついてきた。

谷口「悪いな」
大将「なんも言ってことよ!どうせお代はお前持ちなんだからよ。頑張れよ、若者たち!」
梨里杏・蓮・小雪「ありがとうございます!」
谷口「じゃ、食おうぜ」

4人はいただきますと言い、一斉に食べだした。

梨里杏「ん!美味しい!」
蓮「老舗って感じの味がするな」
梨里杏「なんかわかるかも」
小雪「これは常連になるのわかるわぁ……」
大将「そんなに褒めてもなんもでないぞ〜」

和気あいあいとした空気が流れる。少し緊張がほぐれたようだ。4人は食べ終わると店を出た。

谷口「今日は解散で。各自、明日に備えるように!特に門田はオーバーワークしないように」
小雪「はぁい」
梨里杏「はい!ごちそうさまでした!」
蓮「あざした」
小雪「みんな、明日、頑張ろう!」
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