求愛過多な王子と睡眠不足な眠り姫
川口が両手をテーブルにつき乗り出して主張する。ひたむきな好意を同等の熱量で応えられない自分に唇を噛む。
今にも泣き出す姿を直視できず、視線を落とすとスイカの乗った皿へ着地した。デザートとして提供されたであろうスイカは川口の分は手付かず、一方ミントはキレイに完食してある。
「……スイカ、か」
ポツリ、呟く。
「は?」
「昔、得意先回りしていた時にスイカを丸々1個、土産として持たされた事があってね」
「は、はぁ?」
露骨な話題反らしと感じるのだろう、川口のリアクションは怪訝だ。しかし僕の中で、とある記憶が溢れて語らないでいられない。
「新人の僕はスイカを持ち歩いて営業先を回ったんだ。ロッカーに預けたり、一旦事務所へ戻るとかやりようはあったのに思い付かなくてさ。
で、仕事が終わった頃にはスイカは傷だらけ、そのうえ生温かくなっていた訳」
僕の膝の上で丸くなり、規則的な寝息を立てるミントを見る。
「苦労して持ち帰ったスイカ、直属の上司や同僚は食べたがらなかったよ。でもミントは違った」
スイカを皿ごと口元へ寄せた。
「それではご覧あれ、これが『スイカを8等分した笑顔』だ!!」
「ーーへ、いや、それは16等分じゃ? というか寒いです、オヤジギャグ?」
「はは、冷静なツッコミいいね! とまぁ、無愛想な同期が一発芸して、食べてくれたって話。2人でムキになって平らげたからか、翌日は腹痛起こして大変だったなぁ〜懐かしい」
話の展開に唖然とする川口。少ししてから吹き出す。
「なにそれ、ただスイカ食べただけじゃないですか!」
「うん、そうだよ。上手く説明できなくて悪いけどミントのこういう所が好きで、他の人じゃ駄目なんだ」
「……」
「すまない。君の気持ちが僕へ向いたままなのを承知しつつ、営業部員として頼もしくなるのを嬉しく思っていた。川口は僕に上司としての喜びを感じさせてくれたんだ」
一呼吸おく。
「ありがとう」
今にも泣き出す姿を直視できず、視線を落とすとスイカの乗った皿へ着地した。デザートとして提供されたであろうスイカは川口の分は手付かず、一方ミントはキレイに完食してある。
「……スイカ、か」
ポツリ、呟く。
「は?」
「昔、得意先回りしていた時にスイカを丸々1個、土産として持たされた事があってね」
「は、はぁ?」
露骨な話題反らしと感じるのだろう、川口のリアクションは怪訝だ。しかし僕の中で、とある記憶が溢れて語らないでいられない。
「新人の僕はスイカを持ち歩いて営業先を回ったんだ。ロッカーに預けたり、一旦事務所へ戻るとかやりようはあったのに思い付かなくてさ。
で、仕事が終わった頃にはスイカは傷だらけ、そのうえ生温かくなっていた訳」
僕の膝の上で丸くなり、規則的な寝息を立てるミントを見る。
「苦労して持ち帰ったスイカ、直属の上司や同僚は食べたがらなかったよ。でもミントは違った」
スイカを皿ごと口元へ寄せた。
「それではご覧あれ、これが『スイカを8等分した笑顔』だ!!」
「ーーへ、いや、それは16等分じゃ? というか寒いです、オヤジギャグ?」
「はは、冷静なツッコミいいね! とまぁ、無愛想な同期が一発芸して、食べてくれたって話。2人でムキになって平らげたからか、翌日は腹痛起こして大変だったなぁ〜懐かしい」
話の展開に唖然とする川口。少ししてから吹き出す。
「なにそれ、ただスイカ食べただけじゃないですか!」
「うん、そうだよ。上手く説明できなくて悪いけどミントのこういう所が好きで、他の人じゃ駄目なんだ」
「……」
「すまない。君の気持ちが僕へ向いたままなのを承知しつつ、営業部員として頼もしくなるのを嬉しく思っていた。川口は僕に上司としての喜びを感じさせてくれたんだ」
一呼吸おく。
「ありがとう」