あの日の第二ボタン

期待と失望、遠距離の再会

悠依は自分の部屋で、塾から届いた封筒を開いた。
中には十一月に受けた模試の結果が入っていた。
中から紙を取り出して結果を確認する瞬間、悠依は心臓が飛び出そうになった。

悠依は個人的には、今の実力を出し切ったつもりだったので、多少の自信があった。
緊張しながら結果を確認する。

「……努力圏……これだけやっても、ダメなのか……」

悠依は模試の結果を握りしめた。
焦る気持ちに完全に支配されていた。

「ゆいー?結果、どうだったの?」

母親が部屋に入ってきて悠依に尋ねた。

「……ダメだった……やっぱり、私には長川は無理なんかな……」

悠依は弱音を溢す。

「そんなことないわ、あなたは本当によく頑張ってる。絶対合格できるよ。」

最近の悠依の努力を間近で目にしていた母親は他でもない、悠依の味方であった。

窓の外では近所の子ども達が遊ぶ声が聞こえる。
悠依はカーテンをシャーと閉じて机に向かう。

「……先輩は、こんな重圧に打ち勝ってたのか……私、どんなに頑張っても、追いつけそうにないよ……そんなに遠くに行っちゃったの……」

文字を書こうとする手が震える。

「……私じゃ、無理なのかな……」

ノートに一滴、二滴と雫が落ちて文字が滲む。
 

気づけば三月になり、厳しい寒さも和らいでいた。

優人は翌日に入試を控えた教室の会場準備をしていた。
廊下の壁に設置してある「二年二組」のプレートに「入試B教室」の紙を掲示する。

「もう、二年前なのか……」

優人は、自分が受験をしたのが遥か昔に感じていた。
机に受験番号と指名が書かれた紙を一つずつ並べていく。

「……この中から後輩が出るのか……」

優人は感慨深く準備をしていると、ある名前が目につく。

「……山本、悠依……これって……ゆいちゃんだ!うち、受けるんだ!」

優人は自然と笑みが溢れた。
自分が高校一年生になる新学期よりも待ち遠しかった。
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