あの日の第二ボタン
「それでは、始めてください。」
試験監督の一言と共に受験生が問題用紙を開き、問題を解き始める。
悠依はひと呼吸おき、心を落ち着かせてから問題に取り掛かる。
今までの自分の努力を思い返し、緊張で高鳴る心臓を抑える。
「解答をやめてください。」
試験監督がそう告げ、五教科目の英語の試験が終わった。
「……不安は残ってるけど、やり切ったはず。」
悠依は清々しい表情で憧れの地、長川高校を後にした。
三月の空はどこまでも澄み渡り、吹き抜ける風はかすかに春の香りがした。
「新入生、入場。」
司会の教師が意気揚々と告げる。
優人は、緊張した面持ちで会場に入場する新入生の中にある人をくまなく探していた。
新入生点呼では各クラスの担任が一人ずつ名前を読み上げていく。
「……タカハシケンタロウ、……ハシモトリュウト、ヒグチリン、……、ヤマモトソウタ、ワタナベリンタロウ。以上、一年六組計四十名。以上、一年生計240名。」
一年六組の教師が一礼して司会者台を後にする。
「……い、いない……」
優人が待ちに待っていた名前は、読み上げられなかった。
「……ダメ、だったのか……」
「我が赤塚高校は、県内屈指の私学高校として勉強にスポーツに全力で取り組む高校です。地域の皆さんにも恥じぬよう……」
悠依は新品の制服を身にまとい、校長の話に耳を傾けていた。
新しい制服は着心地が悪くて、悠依は話に集中できなかった。
新学期の期待と不安で胸を膨らませる新入生とは対照的に、悠依の心は喪失感で満たされていた。
窓からはすでに満開を迎え花が散り始めている桜が風に揺られていた。
試験監督の一言と共に受験生が問題用紙を開き、問題を解き始める。
悠依はひと呼吸おき、心を落ち着かせてから問題に取り掛かる。
今までの自分の努力を思い返し、緊張で高鳴る心臓を抑える。
「解答をやめてください。」
試験監督がそう告げ、五教科目の英語の試験が終わった。
「……不安は残ってるけど、やり切ったはず。」
悠依は清々しい表情で憧れの地、長川高校を後にした。
三月の空はどこまでも澄み渡り、吹き抜ける風はかすかに春の香りがした。
「新入生、入場。」
司会の教師が意気揚々と告げる。
優人は、緊張した面持ちで会場に入場する新入生の中にある人をくまなく探していた。
新入生点呼では各クラスの担任が一人ずつ名前を読み上げていく。
「……タカハシケンタロウ、……ハシモトリュウト、ヒグチリン、……、ヤマモトソウタ、ワタナベリンタロウ。以上、一年六組計四十名。以上、一年生計240名。」
一年六組の教師が一礼して司会者台を後にする。
「……い、いない……」
優人が待ちに待っていた名前は、読み上げられなかった。
「……ダメ、だったのか……」
「我が赤塚高校は、県内屈指の私学高校として勉強にスポーツに全力で取り組む高校です。地域の皆さんにも恥じぬよう……」
悠依は新品の制服を身にまとい、校長の話に耳を傾けていた。
新しい制服は着心地が悪くて、悠依は話に集中できなかった。
新学期の期待と不安で胸を膨らませる新入生とは対照的に、悠依の心は喪失感で満たされていた。
窓からはすでに満開を迎え花が散り始めている桜が風に揺られていた。