【完結】悲劇の継母が幸せになるまで
頭を抱えて謝罪を繰り返すヴァネッサの姿が今でも鮮明に思い出せる。
体調が戻りつつある彼女にティンナール伯爵家のことを聞けば、また取り乱してしまうかもしれない。
それに、あのような行動を取ったのもギルベルトへの恐怖心からだろう。

(何を言われたかは知らないが、ろくなことではないだろうな)

ヴァネッサの妹であるエディットはあまりいい噂を聞かない。
甘やかされた令嬢の典型的な例だ。
ヴァネッサは前妻との子ども。
つまり異母姉妹なのだが、これだけの格差を見せつけられたら何があったか明白だ。
このままではあまりにもヴァネッサが可哀想ではないか。

ギルベルトが動かなければ、どうなっていたか考えたくもない。

よく悪夢でうなされていると聞いて、様子を見に行くのだがギルベルトがいると心底安心した表情を見せる。
嬉しそうに手のひらに縋りつく彼女はなんだか放ってはおけない。

それにギルベルトも自分の噂をどうにかしなければと思っていた。
妻だった女性が二人も短期間で亡くなってしまったことであらぬ噂をたてられているのは知っていた。
それに自分が兄を殺してシュリーズ公爵家を手に入れたのではないということも……。
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