【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

症状が軽くなってからは何でも食べてもいい、むしろ食べられるならいくらでも食べていいと言われてしまう。
ヴァネッサも日に日に体が軽くなるのを感じていた。

もうすぐ普通に暮らせるようになるだろうと聞いて嬉しくてたまらなくなった。

今まで焦がれていた〝普通の生活〟が手に入る。

それはヴァネッサにとっても、前世での自分にとっても喉から手が出るほどに欲しかったものだからだ。
まるで夢でも見ているようだ。
普通のことをするたびに嬉しさから自然と涙が溢れでる。
こちらを見るギルベルトは複雑そうな表情だ。
これ以上、心配をかけてはいけないとヴァネッサは乱暴に涙を拭って笑顔を作った。

それからヴァネッサを地獄に突き落とした人たち。
ティンナール伯爵たちやギルベルトを悪く言っていたエディットに対する激しい怒りが込み上げてくる。

(……あの人たち、本当に許せない)

ヴァネッサはティンナール伯爵家の行いを心の底から軽蔑していた。
だけど今は幸運にも前世の記憶を思い出すことができた。
だからこそ、ただ怯えるだけなんて絶対にしたくない。

(元気になって、いつか必ず見返してやるわ……!)
< 60 / 210 >

この作品をシェア

pagetop