【完結】悲劇の継母が幸せになるまで
「ふーん、確かに顔色はいいじゃない」

「ふふっ、ありがとうございます」

「よ、よかったら一緒にお菓子を食べてあげてもいいわよ!」


ガゼボのテーブルにはカップケーキやクッキー、紅茶などが並べられている。
ヴァネッサがパッと顔を輝かせた。

(あんなにも美味しそうなお菓子が……! 食べてみたいわ)

よだれが垂れそうになるのをなんとか耐えつつ、ヴァネッサが「もちろん!」と、言う前にセリーナが前に出る。


「アンリエッタお嬢様、ヴァネッサ様はまだ体調が万全ではないのです」

「…………そう」


明らかにしょんぼりとしてしまったアンリエッタを見て、ヴァネッサは声を上げる。


「今日はとても調子がいいの。セリーナ、レイ、少しだけダメかしら……?」


ヴァネッサの問いかけにセリーナは気持ちを理解してくれたのだろうか。
困ったように「少しだけですよ」と言われて、ヴァネッサは大きく頷いた。

そしてアンリエッタの元へと向かう。
アンリエッタは驚きながらもヴァネッサを見ていたが、ヴァネッサはお菓子に目を奪われて気がつくことはなかった。

その後、すぐにヴァネッサの分の紅茶を用意するようにそばにいた侍女が動き出す。
こう見るとティンナール伯爵家の侍女たちは皆、まったくやる気がなかったように見える。
それはヴァネッサに仕事を押し付ければよかったからだろうか。
シュリーズ公爵家の侍女たちの動きは無駄がなく行動が早い。
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