【完結】悲劇の継母が幸せになるまで
「ヴァネッサ、もう回復したの?」
「えぇ、だけどギルベルト様はもう少しだって止められてしまうの」
「そう……お父様が……」
ギルベルトの話題が出ると少しだけアンリエッタの声が低くなる。
これ以上は言わない方がいいかもしれない。
他に話題を探そうとしたヴァネッサの視界にクッキーやマドレーヌが目に入る。
(お、美味しそう……!)
病院暮らしで滅多に食べられなかった甘いもの。
もちろん今まで虐げられたヴァネッサにもこのようなお菓子を食べた経験はない。
「わたくしのおやつだけどどんどん食べなさい!」
「いいのかしら」
「えぇ、あなたなら、特別に食べさせてあげなくもなくってよ!」
ヴァネッサはツンとした言い方だが内容はとても優しい。
手を合わせつつヴァネッサは美しく並んでいるクッキーを眺めていた。
それからチョコチップが練り込まれたクッキーを手に取ると、空に掲げるようにして見つめた。
夢にまで見たクッキーである。
一口、口に含むとねっとりとした生地とチョコレートの甘さに感動してしまう。