罪深く、私を奪って。
弱弱しく響いた私の声に、沼田さんは大きく笑い声を上げた。
「そんな事あるでしょ。僕がどんなに真剣に誘ったって、全然相手にしてくれなかったくせに、顔のいい永瀬や石井が誘えば簡単についていくんだから!」
「ちょっと待ってよ。その言われ方は心外だなぁ」
煙草の煙をふーっと吐きながら、永瀬さんが沼田さんの言葉を遮った。
「それじゃ、俺達がまるで中身の無い男みたいじゃん。まぁ俺の顔がいいのは否定しないけど」
「どういう意味だよ」
「努力もしないで女にモテたいなんて、虫がよすぎるっての。人を僻んでばっかりの小さい男を、どこの女が好いてくれるよ。人を外見でしか判断しないのはお前自身だろ。詩織ちゃんは顔がいいだけの男を選んだりしないよ」
迫力のある声で沼田さんに向かってそう言うと、永瀬さんは私を振り返った。
「そうでしょ? 詩織ちゃん。俺がどんなに口説いたってまったく相手にしてくれないんだから。こんなにいい男なのに」
ガラリと口調を変えて明るい声でそう言い、ニヤリと冗談めかして笑う。
永瀬さんはすごいと思う。
どんな張り詰めた空気も見事にほぐして見せる手品師みたいだ。
「少なくとも、俺は女の子を口説くのに脅して怖がらせるみたいな卑怯な真似しないね。お前は顔以前にその性格が問題なんだろ?」
短くなった煙草を地面に捨て、靴底でぎゅっと潰しながら永瀬さんがそう言った。
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