罪深く、私を奪って。
沼田さんから、電話番号を書いたメモなんてもらった事あったっけ……?
必死に記憶を探っていると、
「エレベーターの中に、くしゃくしゃにして捨てた事も忘れてるんだ」
低い声でそう言われた。
エレベーターの中。
……そうか、あの時だ。
沼田さんから、中傷メールが流れてると言われたあの時。
別れ際に私の手に握らせたメモ用紙。
私はそれがくしゃくしゃになるのも構わずに握りしめて、エレベーターの中にしゃがみこんで涙をこらえてた。
あの時、エレベーターの中に落としたんだ……。
「あの日、帰ろうとしたらエレベーターの中に捨てられたこのメモを見つけたんだ。そして、駐車場で永瀬の車に乗る野村さんの姿を見た。野村さんも顔のいい男しか興味がないんだって、僕なんて最初から相手にされないんだってわかったよ」
くしゃくしゃのメモを手に言葉を無くした私に向かって、沼田さんは軽蔑するように鼻で笑った。
「くやしくて腹が立って車で後をつけてやろうと追いかけたら、アパートの前に止めた車の中でキスまでしてさ」
きっと、助手席側のドアを開けてもらった時、重なったシルエットがキスしてるように見えたんだ。
「どうせ女なんて、結局顔のいい男しか相手にしないんでしょ。いつも綺麗な顔でニコニコ笑いかけながら、腹の中では地味な男を馬鹿にしてたんでしょう!」
「そんな、そんな事ないです……」
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