罪深く、私を奪って。
でも、なんで亜紀さんと結納中のはずの石井さんが……?

中庭の見える通路を通り過ぎ、ホテルのロビーを通った時、
「あ、詩織ちゃん!……と、石井じゃん」
「ほんとだ!」
聞き覚えのある二人の声。
振り向くとそこにいたのは、
「えっ!? 亜紀さん! 永瀬さん!?」
着物姿の亜紀さんと、その隣にいるスーツ姿の永瀬さん。
「石井、なにやってんの?」
ニヤニヤとしながらそう聞いた永瀬さんに向かって、石井さんは私を抱き寄せながら言った。
「見合い相手から奪ってきた」
ちょ……!
お願いだから、耳元でそんな事を言わないでください。
それでなくても混乱中なのに、体中をめぐる血液が沸騰寸前だ。
「キャーカッコいー!」
「さすがダーリン!!」
二人は面白がるように口笛を吹きながら歓声を上げる。
ちょっと待って!
疑問が次から次へと湧いてきて、頭の中がどうにかなりそうなんだけど。
キャーキャー言って騒ぐ二人に背中を向けて、石井さんはホテルのロビーを後にする。
有無を言わさず手を引っ張られ連れ去られる私。
足がもつれないように必死で彼の後を追いながら、頭の中をフル回転させて今の状況を整理する。
亜紀さん、結納って言ってたのになんで永瀬さんと一緒にいたの?
もしかして亜紀さんって石井さんとじゃなく永瀬さんと婚約したの?
……って事は、もしかして……
亜紀さん、二股……!?
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