罪深く、私を奪って。
永瀬さんと亜紀さん。あの曲者二人組が、心底嫌そうに眉をひそめる石井さんを見て喜ぶ姿が。
石井さんはまだ事態が把握できずに呆然としている私を、乱暴に助手席に乗せた。
バン、と大きく音をたてて乱暴に車のドアを閉める。
「でも! 石井さん、亜紀さんと付き合ってるの否定しなかったしなかったじゃないですか! 休憩室で仲良く結婚情報誌見たりして……、あんなの見たら誰だって付き合ってると思いますよ!」
「ああ」
納得できなくて混乱中の私を横目に、平然とそう頷いて運転席に座る彼はゆっくりと煙草に火をつけた。
ああって。
人がこんなに混乱してるのに、ああって。
「亜紀と俺が付き合ってるって勘違いしてるんだろうなとは思ったけど、まぁいいかと思って」
「ひどい……!」
まぁいいかって! いいわけがない。
亜紀さんと石井さんが付き合ってると思って、私がどれだけ悩んで苦しんだか。
「酷いのは、どっちだよ」
乱暴に車を発進させながら、石井さんが舌打ちした。
煙草を咥えたまま不機嫌そうに歪めたその唇が色っぽくて、ついみとれそうになる。
……いや、今はみとれている場合じゃない。
「人の事、完全に忘れやがって」
運転の合間に、黒い瞳を細めてちらりと助手席に座る私を睨む。
「……うそつき」
石井さんは嘘つきだ。
酷いのは、石井さんの方なのに。
「嘘つきって、俺が?」
「だって私最初に聞いたのに」
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