罪深く、私を奪って。
いつも冷たくて近寄りがたい石井さんが笑った。
これってかなりレアな瞬間かも。
なんて、思わず亜紀さんの彼氏相手にどきっとした後ろめたさを誤魔化しながら、バッグからお財布を出した。
「いくらでしたか? 払います」
「いいよ、別に」
「……でも」
亜紀さんは彼氏に出してもらってもいいだろうけど、私の分まで払ってもらうのは申し訳ない。
それじゃなくても、わざわざ車で送ってもらっちゃったのに。
「でも、やっぱり自分の分は払います」
出したお財布を手に彼を見ると、シートの背もたれに肘を置くようにして、私の事を見下ろしていた。
運転席と助手席。
その距離の近さに、私の心臓はまた勝手に動きを速める。
まっすぐに私の事を見るその黒い瞳が、誰かに似てる、そう思った。
「あ、あの……。もしかしてどこかで会った事、ありませんか?」
私が恐る恐るそう聞くと、彼は軽く顔を傾け小さく笑った。
「会ってるよ。会社で」
「いえ、そうじゃなくて……」
会社で見かけたとか、すれ違ったとかじゃなくて。
もっと、こう……。
脳の奥深くの記憶に引っかかるような、もどかしい感覚を説明したくて言葉を探す私に、
「……何? もしかして」
彼は顔を近づけ、耳元で掠れたような、低い声で囁いた。
「俺の事、口説いてんの?」
至近距離で響いた、彼の艶のある声。
一瞬耳たぶに触れた吐息は、それだけで私の心を強引にかき乱した。
これってかなりレアな瞬間かも。
なんて、思わず亜紀さんの彼氏相手にどきっとした後ろめたさを誤魔化しながら、バッグからお財布を出した。
「いくらでしたか? 払います」
「いいよ、別に」
「……でも」
亜紀さんは彼氏に出してもらってもいいだろうけど、私の分まで払ってもらうのは申し訳ない。
それじゃなくても、わざわざ車で送ってもらっちゃったのに。
「でも、やっぱり自分の分は払います」
出したお財布を手に彼を見ると、シートの背もたれに肘を置くようにして、私の事を見下ろしていた。
運転席と助手席。
その距離の近さに、私の心臓はまた勝手に動きを速める。
まっすぐに私の事を見るその黒い瞳が、誰かに似てる、そう思った。
「あ、あの……。もしかしてどこかで会った事、ありませんか?」
私が恐る恐るそう聞くと、彼は軽く顔を傾け小さく笑った。
「会ってるよ。会社で」
「いえ、そうじゃなくて……」
会社で見かけたとか、すれ違ったとかじゃなくて。
もっと、こう……。
脳の奥深くの記憶に引っかかるような、もどかしい感覚を説明したくて言葉を探す私に、
「……何? もしかして」
彼は顔を近づけ、耳元で掠れたような、低い声で囁いた。
「俺の事、口説いてんの?」
至近距離で響いた、彼の艶のある声。
一瞬耳たぶに触れた吐息は、それだけで私の心を強引にかき乱した。