罪深く、私を奪って。
ゆっくりと永瀬さんを振り返ると、その私の笑顔を満足げな顔で見ていた。
……しまった。また永瀬さんに乗せられたんだ。
私がもう一度大きなため息をつくと、永瀬さんは嬉しそうにクスクスと笑った。
永瀬さんの思惑通り、まんまと乗せられて転がされてる感じ。
正直ちょっと悔しいけど、どうやったって私はこの人に敵いそうにない。
「俺、ちょっとそのメールの事調べてみるわ」
運転席で伸びをしながらそう言った永瀬さんに、思わず眉をひそめた。
「え、でも……」
「大丈夫。別にそんなメール読んだ? なんてみんなに聞いて回るようなバカな事しないし、犯人見つけてつるし上げるつもりもないから。ただ、このままメールの内容も出所もわかんないままだと気持ち悪いだろ」
笑顔でそう言われて、あの時エレベーターで会ったのが永瀬さんでよかったと心から思った。
きっと永瀬さんとこうやって話せなかったら、私は一人で悩んでぐずぐすと泣いているだけだったかもしれない。
怖くて会社に行けなくなっていたかもしれない。
たった一人でも、自分の味方になってくれる人がいる。
そう思うだけで、私の心は驚くほど穏やかになっていた。
「永瀬さん、本当にありがとうございます」
「どういたしまして」
泣きそうになりながらも、必死に涙をこらえて笑った私の頭を、永瀬さんは力任せになでてくれた。

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