罪深く、私を奪って。
運転席の石井さんに向かってそう頭を下げると、
「いや、永瀬に無理矢理頼まれただけだから」
そう素っ気なく返される。
ふたりっきりで食事をしたあの日から、私は彼を一方的に避けて来たけど、それがバカバカしくなるほど、石井さんは私に対して無関心だ。
まるで、あの時のキスが嘘だったみたいに。
確かにあの日、私はこの人とキスをしたんだよね……?
強引に重なった唇。
体の自由を奪う逞しい腕。
耳に届いた自分のものじゃないみたいに乱れた呼吸。
一瞬、その時のすべてが生々しく甦ってぞくりとした。
「……どうした?」
「な、なんでもないです!」
石井さんの低い声に我に返り、その視線から逃げるように慌てて車の外に出た。
助手席のドアを閉めながら、もう一度ありがとうございました、と頭を下げようとすると、反対の運転席から石井さんが降りてきた。
「部屋の前まで送る」
冷たい口調でそんな事を言う石井さんに、驚いて首を横に振った。
「いいですよ! そんな。すぐそこのアパートだし……」
目の前のレンガ調の外壁のアパートを指さしてそう言う。
わざわざ部屋の前まで送ってもらうなんて、今日はすごく寒いのに。
「いいから。なんかあったら永瀬に文句言われるのは俺なんだよ」
反論する私の言葉なんて、最初から聞く気はないらしい。
面倒くさそうにそう言うと、石井さんは勝手にアパートに向かって歩き出す。
何かあったら、なんて。
「いや、永瀬に無理矢理頼まれただけだから」
そう素っ気なく返される。
ふたりっきりで食事をしたあの日から、私は彼を一方的に避けて来たけど、それがバカバカしくなるほど、石井さんは私に対して無関心だ。
まるで、あの時のキスが嘘だったみたいに。
確かにあの日、私はこの人とキスをしたんだよね……?
強引に重なった唇。
体の自由を奪う逞しい腕。
耳に届いた自分のものじゃないみたいに乱れた呼吸。
一瞬、その時のすべてが生々しく甦ってぞくりとした。
「……どうした?」
「な、なんでもないです!」
石井さんの低い声に我に返り、その視線から逃げるように慌てて車の外に出た。
助手席のドアを閉めながら、もう一度ありがとうございました、と頭を下げようとすると、反対の運転席から石井さんが降りてきた。
「部屋の前まで送る」
冷たい口調でそんな事を言う石井さんに、驚いて首を横に振った。
「いいですよ! そんな。すぐそこのアパートだし……」
目の前のレンガ調の外壁のアパートを指さしてそう言う。
わざわざ部屋の前まで送ってもらうなんて、今日はすごく寒いのに。
「いいから。なんかあったら永瀬に文句言われるのは俺なんだよ」
反論する私の言葉なんて、最初から聞く気はないらしい。
面倒くさそうにそう言うと、石井さんは勝手にアパートに向かって歩き出す。
何かあったら、なんて。