エリート外科医の蕩ける治療
「一真さん、ごめんなさい。いーでぃーって何ですか? まさか命に関わる病気?」

自分の知識のなさに申し訳なく聞いてみると、一真さんは「いや」と手で口元を覆い、そのまま黙ってしまう。とりあえず命に関わるわけではなさそうで、私は胸をなで下ろしながら、一真さんの次の言葉を待った。

「……EDっていうのは、その、つまり、……男として役に立たないと言うか」

「え、え、……たたない?」

「そう、勃たない。だから、マリエと別れた」

たたないって、さすがにもう間違わない、ニョキッと立派にそびえ立つ、アレのことだよね? 一真さんのを想像して一気に頬が熱くなった。なんで想像しちゃったの、私。煩悩を振り払うようにブンブンと頭を横に振る。

「で、でも、一真さんとエッチしましたよね? あれは偽物だったんですか?」

「いや、本物だけど……。だから、なんというか、ずっとできなかったけど、杏子とならできる、というか……」

「それはよかったです!」

「よくないだろ!」

一真さんが思いのほか声を荒げるので、ビクッと肩が揺れた。命には関わらないけれど、深刻な状態なのだろうか。でも一真さんと何度もシてるし、もしかして毎回辛かったのかな、なんて考えたりしたのだけど――。

「俺は杏子から濡れないって相談を持ちかけられたとき、杏子を診察するふりをして自分の機能を試したんだ。杏子のこと、騙して利用した。謝って許してもらえることじゃないけど……ごめん」

「あ……」

そういうことか。私は一真さんに医者として診察してもらったとばかり思っていたけれど、一真さんは違っていたんだ。診察するフリをして、自分のことを――。

心臓がぎゅっと締めつけられる。だけど一真さんを責める気持ちにはなれなかった。だってあの時、無茶なことを言ったのは私の方だから。一真さんは私を利用したって言うけれど、利用したのは私の方。一真さんは私の願いを聞いてくれただけ。そのおかげで、トラウマを克服できた。

それが私にとってどれだけ救いになったか、知らないでしょう?
< 110 / 113 >

この作品をシェア

pagetop