エリート外科医の蕩ける治療
「……一真さんは、今も私のことを利用してるんですか?」

「違う、今は杏子のことが好きでたまらなくて、……愛しているんだ。だから謝りたくて――」

何だかもう、その言葉が聞けただけで溜飲が下がった。私は一真さんに近づく。そっと頭を抱え込んで抱きしめた。本能が、勝手にそうやって動いた。

「……じゃあよかったです。私は一真さんでしか濡れないし、一真さんも私でしか勃たない。同じSSR同士ですね」

「……許してくれるのか?」

「許すもなにも、一真さんは別れるつもりでこの話をしたんですか?」

「いや、違う。……別れたくない」

一真さんの手が私の腰に巻き付く。ぎゅっと密着してあったかい。私も一真さんと同じく、別れたくないと思っている。よかった、同じ気持ちで。

「危うく最後の晩餐になるところでしたね」

「杏子……。好きだ」

「私も一真さんのこと大好き」

騙したとか利用したとか、嘘をついたとか、その言葉一つ一つは悪い意味かもしれないけれど、でも今があるのはその悪い事のおかげ。

決して褒められたことじゃないけど、私たちにとってはそこは重要な始まりであり、通過点だった。

「……なんかこれ、落ち着く」

一真さんがボソリと呟く。
抱きしめた形が、私は立膝で、たまたま一真さんの顔に私の胸を押しつけている状態だ。これはあれだ、桜子さんの「男は顔に胸を押しつけてあげたら落ち着くらしい」を自ら実行してしまったわけだ。決して意図してやったわけじゃないことは言い訳をしておく。

「一真さんが元気になるなら、いつでもしてあげますよ」

「……アソコも元気です」

「そういう意味で言ってません」

「調子に乗ってすみません」

顔を見合わせると、どちらからともなくふっと笑みがこぼれる。

一緒に笑いあえることが何よりも嬉しい。私はこれからも大好きな一真さんといたい。たくさんの時間を過ごしていきたい。
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