エリート外科医の蕩ける治療
「治療? これは治療だったのか?」
「だってお医者さんだから、治療ですよね? 次はいつしてくれますか?」
「は?」
「治療。あ、診察?」
「おまっ、自分が何言ってるかわかってるのか?」
馬鹿なこと言ってるって自覚はある。だけど永年のトラウマが解消されかけているのだ。こんな奇跡に縋りつきたいって思う気持ちに嘘はつけない。
清島さんは困ったように前髪をかき上げる。ほどよく引き締まった腕や胸板は、改めて見るととても色っぽくて目のやり場に困る。そういえばお互いまだ裸なのだ。するすると控えめにシーツを手繰り寄せて、胸のあたりでぎゅっと握った。無言の間が、羞恥と緊張を高めていく。
「あー……。じゃあ次も考えるけど……」
「はいっ!」
「だけどこれは特別診療だからな、誰にも言うなよ」
「わかりました」
嬉しくて顔が綻ぶ。治るかもしれない明るい兆し。ものすごく満たされた気持ちに胸がいっぱいになる。
「あっ、そうだ。先生、診察代はおいくらですか?」
「……杏子、お金持ってないんじゃなかった?」
「手持ちはないだけですよ」
家に帰ればあるし……。
って、もしかして特別診療だから、ものすごく高かったりする? どうしよう、法外な値段提示されたら払えないかも。
「せ、先生。ローンは組めますか?」
「ローン? 何を言ってるんだ?」
「だって特別だから、ものすごく高い気がして……」
きょとんとした清島さんは突然ぷっと破顔して、お腹を抱えてケラケラと笑い出した。一人だけとても楽しそうだ。私は真剣だというのに。
「くくくっ、杏子、それ本気で言ってる?」
「ほ、本気ですよぅ!」
「あはは!」
「なんで笑うんですか!」
「想像力豊かだなあと思って。そうだな、特別診療だからな、プライスレスだ」
「それって、ローンも無理なんじゃ……」
「そう。だから、二人だけの秘密だ」
「秘密……」
「誰かに漏らしたら、呪いが発動する」
「呪い?!」
「あはは! なんで信じるの?」
「え、嘘? え、何が本当? からかってる?」
清島さんが楽しそうに笑う。からかわれて悔しいのに、清島さんの笑顔が眩しすぎて胸がドキンと高鳴った。
え……。なにこれ、ドキンって。
新しく芽生えた自分の感情に戸惑う。それを隠すように、私も笑った。
この時間がとても尊いもののように思えた。
「だってお医者さんだから、治療ですよね? 次はいつしてくれますか?」
「は?」
「治療。あ、診察?」
「おまっ、自分が何言ってるかわかってるのか?」
馬鹿なこと言ってるって自覚はある。だけど永年のトラウマが解消されかけているのだ。こんな奇跡に縋りつきたいって思う気持ちに嘘はつけない。
清島さんは困ったように前髪をかき上げる。ほどよく引き締まった腕や胸板は、改めて見るととても色っぽくて目のやり場に困る。そういえばお互いまだ裸なのだ。するすると控えめにシーツを手繰り寄せて、胸のあたりでぎゅっと握った。無言の間が、羞恥と緊張を高めていく。
「あー……。じゃあ次も考えるけど……」
「はいっ!」
「だけどこれは特別診療だからな、誰にも言うなよ」
「わかりました」
嬉しくて顔が綻ぶ。治るかもしれない明るい兆し。ものすごく満たされた気持ちに胸がいっぱいになる。
「あっ、そうだ。先生、診察代はおいくらですか?」
「……杏子、お金持ってないんじゃなかった?」
「手持ちはないだけですよ」
家に帰ればあるし……。
って、もしかして特別診療だから、ものすごく高かったりする? どうしよう、法外な値段提示されたら払えないかも。
「せ、先生。ローンは組めますか?」
「ローン? 何を言ってるんだ?」
「だって特別だから、ものすごく高い気がして……」
きょとんとした清島さんは突然ぷっと破顔して、お腹を抱えてケラケラと笑い出した。一人だけとても楽しそうだ。私は真剣だというのに。
「くくくっ、杏子、それ本気で言ってる?」
「ほ、本気ですよぅ!」
「あはは!」
「なんで笑うんですか!」
「想像力豊かだなあと思って。そうだな、特別診療だからな、プライスレスだ」
「それって、ローンも無理なんじゃ……」
「そう。だから、二人だけの秘密だ」
「秘密……」
「誰かに漏らしたら、呪いが発動する」
「呪い?!」
「あはは! なんで信じるの?」
「え、嘘? え、何が本当? からかってる?」
清島さんが楽しそうに笑う。からかわれて悔しいのに、清島さんの笑顔が眩しすぎて胸がドキンと高鳴った。
え……。なにこれ、ドキンって。
新しく芽生えた自分の感情に戸惑う。それを隠すように、私も笑った。
この時間がとても尊いもののように思えた。