エリート外科医の蕩ける治療
「……喜んでいいんですよね?」
「何を?」
「美味しそうって言われたこと」
「俺は褒め言葉として言ったけど、無神経だったな。ごめん」
慌てて首を横に振った。だって謝られることなんて何もない。紛れもなく嬉しいのだから。
「何でかわからないけど、先生に言ってもらえるのは嬉しいです。私の主治医だから?」
「……そうかもな」
清島さんはふっと笑った。
私もつられてふふっと笑う。
お弁当を買いに来てくれるお客さんから、ときどき清島さんの話を聞く。外科の新しい先生は腕がいいと評判らしいだとか、イケメンなのにクールで冷たいだとか。そのどれもが私には新鮮な情報で、私が知っている清島さんは、あの日の夜のことだけ。まだまだ知らないことが多い。だけど『お医者さん』が『診察してくれる』ということにおいて、ずいぶんと信用してしまっている。
「杏子、次の診察だけど――」
ドッキンと心臓が高鳴った瞬間、清島さんのポケットからけたたましく携帯電話が鳴った。
「もしもし……ああ、わかった。すぐ行く」
これ、知ってる。病院から呼び出しの電話。他の先生も、お弁当を買っている最中に呼び出されて帰っていったことが何度かあるから。
「杏子、ごめん。急患だから……」
「そのままで大丈夫ですよ。雨もちょうど小雨になりましたし、よかったです。お気をつけて」
出入口まで見送ると、清島さんは小走りで病院へ帰って行った。
清島さんが見えなくなって、ほうっと息を吐く。何というか、ちょっと緊張したというか。会えて嬉しかったのに、いざ会うとドキドキしてしまって困る。
突然の動悸は何かの病気?
更年期にはちょっと早いだろうし。
それにしてもお医者さんって忙しそうだ。お昼休憩もままならないじゃないか。とりあえずお昼ご飯を食いっぱぐれないでよかったとは思うけど。
「……私も休憩するか」
清島さんのお弁当のゴミをささっと片付けて、休憩スペースへ入る。さっきまでここに清島さんがいたんだと思うと、改めて胸がきゅんと高鳴った。
「何を?」
「美味しそうって言われたこと」
「俺は褒め言葉として言ったけど、無神経だったな。ごめん」
慌てて首を横に振った。だって謝られることなんて何もない。紛れもなく嬉しいのだから。
「何でかわからないけど、先生に言ってもらえるのは嬉しいです。私の主治医だから?」
「……そうかもな」
清島さんはふっと笑った。
私もつられてふふっと笑う。
お弁当を買いに来てくれるお客さんから、ときどき清島さんの話を聞く。外科の新しい先生は腕がいいと評判らしいだとか、イケメンなのにクールで冷たいだとか。そのどれもが私には新鮮な情報で、私が知っている清島さんは、あの日の夜のことだけ。まだまだ知らないことが多い。だけど『お医者さん』が『診察してくれる』ということにおいて、ずいぶんと信用してしまっている。
「杏子、次の診察だけど――」
ドッキンと心臓が高鳴った瞬間、清島さんのポケットからけたたましく携帯電話が鳴った。
「もしもし……ああ、わかった。すぐ行く」
これ、知ってる。病院から呼び出しの電話。他の先生も、お弁当を買っている最中に呼び出されて帰っていったことが何度かあるから。
「杏子、ごめん。急患だから……」
「そのままで大丈夫ですよ。雨もちょうど小雨になりましたし、よかったです。お気をつけて」
出入口まで見送ると、清島さんは小走りで病院へ帰って行った。
清島さんが見えなくなって、ほうっと息を吐く。何というか、ちょっと緊張したというか。会えて嬉しかったのに、いざ会うとドキドキしてしまって困る。
突然の動悸は何かの病気?
更年期にはちょっと早いだろうし。
それにしてもお医者さんって忙しそうだ。お昼休憩もままならないじゃないか。とりあえずお昼ご飯を食いっぱぐれないでよかったとは思うけど。
「……私も休憩するか」
清島さんのお弁当のゴミをささっと片付けて、休憩スペースへ入る。さっきまでここに清島さんがいたんだと思うと、改めて胸がきゅんと高鳴った。