エリート外科医の蕩ける治療
さて、場も盛り上がってることだし、私は美味しい料理でも堪能しますかね。お箸を取ってつくねを卵黄に絡ませる。とろりとしたタレが実に美味しそうだ。

ふと、視線を感じて顔を上げた。目の前の席の清島さんが、不満そうな顔をしながら私を見ている。

「つくね、食べたかったですか?」

「何でヘラヘラしてるの?」

「え?」

「さっきこいつらにバカにされてただろ?」

ドキッと肩が揺れる。
バカにされているかもしれないことはわかっている。そうやって私を踏み台にして、ネタにして、男の興味を自分に寄せているのかも。そんなことわかっているけど、気にしないようにしていたのに。まさかそれを指摘されるだなんて……。

「……いいんですよ。だって本当のことだし。それに私は別に合コンに興味ないから」

「なんで怒らないの? 悔しくないの?」

「え……」

「合コンに興味ないのに何で来たの? 人数合わせ?」

「何でもいいじゃないですか。みんなが楽しかったらそれでいいですもん」

どうして清島さんはこんなことを聞くんだろう。心のどこかで燻っているモヤモヤがむくむくと目を覚ましそう。胸がぎゅっと詰まって苦しくなる。

お箸でつくねをコロコロと転がす。タレが絡んでは落ち、絡んでは落ち、まるで隠してる心を剝がされているみたい。

「……それ、君の本心なの?」

ぽろり、とつくねが箸から転げ落ちた。卵黄の絡んだタレが小さく跳ねる。

「……なんでそんなこと言うんですか?」

「……なんとなく、君が泣きそうな顔をしていたから」

ごくっと息をのんだ。目の前の清島さんはとても真剣な目をしていて、他の人と違ってからかっているようには見えない。それどころか何かを見透かされるような気がして、慌てて目をそらした。
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