エリート外科医の蕩ける治療
「あわわっ」

「顔真っ赤」

「い、言わないでください」

「何で? 可愛いのに」

「〜〜〜っ!」

清島さんはあの手この手で私をからかってくる。そのたびにドキドキしすぎて、もしやオキシトシン出まくりなのでは?

「……先生、私、今回もいける気がする!」

「え、イク?」

「あっ、そういう意味じゃなくて! できるって意味の……」

「なんだ、ずいぶんと積極的かと思ったのに」

「しゃべればしゃべるほど墓穴を掘る気がしてきました」

「面白いからしゃべっててよ」

くすくすと清島さんは楽しそうに笑った。これから診察だというのに、面白要員でいいんですか……?

あっ、あれか。私の緊張をほぐしてくれてる的な?
そういうことですか、先生!

「先生、今日は助けてくれてありがとうございました」

「ん?」

「彼氏のフリしてくれて」

「あー。杏子につられてイケメン彼氏って言ってしまったけど」

「ふふっ、イケメンだから問題ないでしょ」

「イケメンだって思ってくれてるの?」

「イケメンでしょ。先生モテそうだもん。患者さんもキャーキャー言ってますよ。佐々木先生とどっちがモテるかな?」

神木坂総合病院で診察を受けた帰りに、患者さんもよくお弁当を買って行ってくれる。小児科医を受診した親子連れは佐々木先生のイケメンっぷりをよく教えてくれるし、最近は外科を受診したお婆ちゃんが清島先生のイケメンっぷりを話してくれた。

「確かに俊介はモテそうだな」

「優しいですもんね。笑顔が素敵」

「……杏子さ、今は俺と恋人なのに、他の男を褒める?」

「恋人?! ……あ、設定……恋人設定ですね」

「今日はお仕置きだな」

「えっ! あの、その、い、痛くしないでくださいね」

「……何を想像した?」

「……注射、とか? せ、先生こそ何を想像したんですか?」

「……俺は杏子ほど想像力豊かじゃないから」

「あーん、もう、絶対ごまかした」

ぷんすか怒ってみるけれど、清島さんは楽しそうに笑うだけ。でもそうやって笑ってくれることが嬉しいって思ってしまうから、私もつられてヘラっと笑ってしまう。これが先生と患者じゃなかったら、仲の良い恋人同士に見えるのかな……?


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