エリート外科医の蕩ける治療
よく晴れた日曜日、佐々木先生と待ち合わせをして映画を観に行った。

佐々木先生はいつものビシッとした姿とは違い、ラフなシャツにチノパン、スニーカー。シンプルなのにおしゃれで、いつもの爽やかさに磨きがかかっている。

病院では親子に人気だけど、普通に爽やかイケメンでドキドキしてしまった。一緒に働いている看護師さんたちは、佐々木先生にときめかないのだろうか。うむむ、謎だ。

「そういえば何を観るんでしたっけ?」

「うん? これこれ。ニャンコ純愛争奪戦」

指差す先のポスターは、可愛らしくデフォルメされた猫たちがハートにまみれている。可愛いけれど、タイトルとのちぐはぐさが否めない。

「へぇ〜」

「うん、皆そんな反応なんだよ。だから誘っても誰も付き合ってくれない。ニャンコ可愛いんだけどなあ」

「私も猫好きですよ」

「本当? グッズもいっぱいあってさ――」

佐々木先生はウキウキとグッズ売場でニャンコの説明をしてくれる。よっぽど好きなんだなって、可愛らしく思えてくすくすと笑った。

「ごめん、あんまり興味ないかな?」

「ううん。佐々木先生の話、すっごく楽しいです。映画も面白そう。ニャンコの前情報聞いておいてよかったー」

「俺はこの映画館限定ニャンコを手に入れたくて」

「わあ、可愛いぬいぐるみ!」

「だろ?」

「佐々木先生って可愛いもの好きですか? なんか小児科の先生って感じ」

「まあ、俺の精神年齢が低いから、子どもたちと合うのかも」

そう屈託なく笑う佐々木先生はとても優しい顔をしていて、いつもこんな風に診察しているのかなって勝手に想像した。一緒にいると何だかぬるま湯に浸かっているみたい。

「私もなんか買おうかなあ?」

「気に入ってくれた?」

「うん。記念に。このボールペン可愛い〜」

ボールペンの上に猫がちょこんと乗っているタイプで、三種類ある。この映画のヒロインの猫ちゃんと、争奪戦を繰り広げるヒーロー猫二匹。どれも可愛い。

「この猫目つき悪くて可愛いなぁ」

キリッとした目が清島さんみたい。なんて言ったら怒られるかもだけど、何だかよく似ている。

って、何で私は清島さんのことを考えているんだろう。今は佐々木先生と一緒にいるのに。
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