エリート外科医の蕩ける治療
健ちゃんとママが帰った後、カウンターに置き去りにされた唐揚げ弁当を袋に入れて、隅に置いておく。もしかしたら取りに来るかなと期待したけれど、まったくその気配はなく、時間だけが過ぎていった。
清島さん、お昼ご飯も食べずに呼び出されて大丈夫だろうか。お腹空かせてないかな。せっかく久しぶりに買いに来てくれたと思ったのに、妙に不機嫌なんだから。でも――。
『俺以外の誰かとするつもりだったのか?』
そんなことは考えてなかったけど、前に進みたいって気持ちはある。だってもうアラサーだし、同級生だって結婚や出産をしている。他人なんて興味がないなんていったら嘘だ。私もいつかは……って考えたりする。
そのためには濡れる体じゃなきゃダメだった。不感症じゃ幻滅されてしまうし、つまらないって思われてしまうもの。
だから清島さんにお医者さんとして診てもらった。この機会を逃したくないって思ったから。清島さんは医者として私と向き合ってくれて、でも私は完治したからいいでしょって勝手に判断して……。
そもそも清島さんは迷惑じゃなかったの?
桜子さんと結婚するんじゃないの?
考えても埒が明かなくて、私は清島さんのから揚げ弁当を引っ掴む。なにはともあれ、腹が減っては戦はできない。お腹が空いているから、怒りっぽくなるんだ。せめて食いっぱぐれないようにお弁当を届けようではないか。そうしたらきっと、清島さんの機嫌も直るでしょう?
「行くか、ニャン吉」
胸ポケットに差している目つきの悪いニャン吉のボールペンを目の前にかざす。ムスッとした顔がさっきの清島さんとそっくりだ。
店を出て押しボタン式の信号を渡ると、神木坂総合病院の正面玄関がドンと待ち構えている。傍らには救急車が止まり、反対側にはタクシー乗り場。駐車場も広い。とても立派な病院だ。
先生や看護師さんがお弁当を買いに来てくれることばかりで、私が病院を訪れるのは滅多にない。正面玄関を入り、案内看板で外科を探す。
清島さん、お昼ご飯も食べずに呼び出されて大丈夫だろうか。お腹空かせてないかな。せっかく久しぶりに買いに来てくれたと思ったのに、妙に不機嫌なんだから。でも――。
『俺以外の誰かとするつもりだったのか?』
そんなことは考えてなかったけど、前に進みたいって気持ちはある。だってもうアラサーだし、同級生だって結婚や出産をしている。他人なんて興味がないなんていったら嘘だ。私もいつかは……って考えたりする。
そのためには濡れる体じゃなきゃダメだった。不感症じゃ幻滅されてしまうし、つまらないって思われてしまうもの。
だから清島さんにお医者さんとして診てもらった。この機会を逃したくないって思ったから。清島さんは医者として私と向き合ってくれて、でも私は完治したからいいでしょって勝手に判断して……。
そもそも清島さんは迷惑じゃなかったの?
桜子さんと結婚するんじゃないの?
考えても埒が明かなくて、私は清島さんのから揚げ弁当を引っ掴む。なにはともあれ、腹が減っては戦はできない。お腹が空いているから、怒りっぽくなるんだ。せめて食いっぱぐれないようにお弁当を届けようではないか。そうしたらきっと、清島さんの機嫌も直るでしょう?
「行くか、ニャン吉」
胸ポケットに差している目つきの悪いニャン吉のボールペンを目の前にかざす。ムスッとした顔がさっきの清島さんとそっくりだ。
店を出て押しボタン式の信号を渡ると、神木坂総合病院の正面玄関がドンと待ち構えている。傍らには救急車が止まり、反対側にはタクシー乗り場。駐車場も広い。とても立派な病院だ。
先生や看護師さんがお弁当を買いに来てくれることばかりで、私が病院を訪れるのは滅多にない。正面玄関を入り、案内看板で外科を探す。