エリート外科医の蕩ける治療【コミカライズ原作】
「あれ? スベった? 渾身のギャグだったのに」

「いえ、お医者さんだったんですね。知らなかったです」

「おいおい、今さら。ボケ殺しか〜」

「ふふっ」

「ところでさ」

佐々木先生が覗き込むように顔を傾けるので、ふと視線を上げる。

「浮かない顔してどうしたの? あ、もしかして今日診察日だった?」

「いえ、清島先生がお弁当を買いに来てくださったんですけど、急患で帰られてしまって。それで届けに来たんですけど、しばらく戻ってこないって」

「あ~手術でも入ったか?」

「それに、夜は桜子さんと……」

「?」

「ううん。とにかく、お弁当いらなくなっちゃったなーって思って」

右手に持っていた袋を掲げてあははと笑う。何だか切ない。どうして届けようと思ってしまったんだろう。

「じゃあさ、そのお弁当俺が食べてもいい?」

「え?」

「実は昼食べ損ねてるんだよね」

「そうなんですか?」

「そうなんだよ。お腹ペコペコ」

「ペコペコ……」

「ペコペコペコリーン」

「何それ、あはは」

「何だろね? 今日来た子どもが言ってたんだよねー。楽しそうでいいよね」

佐々木先生は私の手からお弁当を受け取ると、屈託なく爽やかに笑った。その笑顔はとんでもなく眩しくて、今の私がその笑顔をまともに受けたら灰になりそうなくらいだ。

だからそのまま帰ろうと思ったのに――。

「んじゃ、行こう」

「えっ?」

「ちょっと付き合って。コーヒーでも飲んでいきなよ」

佐々木先生のペースに乗せられて、あれよあれよと病院内のフリーカフェスペースへ連れて行かれてしまった。おしゃれなテーブルとイスがいくつか設置されていて、誰でも利用できるらしい。

隣のコンビニでお茶とコーヒーを買った佐々木先生は、「はいどうぞ」とコーヒーを渡してくれた。

「ありがとうございます」

「うん。じゃあ俺もいただきまーす」

お弁当の蓋を開けると、唐揚げの香りがふわりと広がる。もうだいぶ冷めてしまったけれど、冷めても美味しいがうちの店のこだわり。

「唐揚げ弁当って注文したことなかったかも。めっちゃ美味い。さすが杏子ちゃん」

「えへへ」

やたら褒めてくれるので、だんだん恥ずかしくなってきて、コーヒーを飲んでごまかす。
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