エリート外科医の蕩ける治療
どっと疲れが押し寄せた。とりあえず食料調達でもしようかと売店へ赴いた。売店の隣のカフェスペースに、杏子と俊介の姿を見つけて、ドキッとする。
なぜ二人がここに? 杏子は帰ったんじゃなかったのか?
楽しそうに笑いあう二人を見て、声が掛けられなかった。杏子は俺以外の前でもあんな風に笑うんだ。むしろ俺にはあんな風に笑ってくれない。今日だって困ったような顔をしていて……。
会話が漏れ聞こえてきて、俺は聞き耳を立てる。途切れ途切れの会話。一体何を話しているのだろう。
「――杏子ちゃん、素直になれって」
「私、――好き……かも」
は……?
好き……?
「よし、よく言えた。偉いぞ」
俊介が満面の笑顔で杏子の頭を撫でる。杏子は頬をピンクに染めながら、えへへと笑った。その姿に俺は膝から崩れ落ちそうなくらいショックを受けた。
杏子はもう俺の手を離れたんだ。俺じゃなくても杏子は濡れる。本当は不感症なんて嘘なんだから、杏子が誰を好きになろうが上手くやれる。相手が俊介なのだから、これは喜ばしいことなんじゃないのか。あいつはいいやつだからな。さながら今朝の俊介との会話は、俺への牽制だったのか。
よかったじゃないか、あんなに悩んでたのに俊介の前では楽しそうに笑うんだから。
俺だって最初は杏子を利用したんだ。俺との行為で杏子がイケたから、それで俺も自信がついたはずだろう?
だから別に杏子じゃなくたっていいはずなのに。
それなのにどうしてこんなにも腹が立つのだろう。
『君も、ちゃんと好きな人と結婚した方が幸せになれると思うよ』
さっき御堂桜子に伝えた言葉。そのまま自分の胸に突き刺さった。
俺の幸せはどこかへ消えた。今更気づいても遅いのだ。
俺は杏子が好きでしかたがないのだと。
もっと早くからわかっていたことなのに。
なぜ二人がここに? 杏子は帰ったんじゃなかったのか?
楽しそうに笑いあう二人を見て、声が掛けられなかった。杏子は俺以外の前でもあんな風に笑うんだ。むしろ俺にはあんな風に笑ってくれない。今日だって困ったような顔をしていて……。
会話が漏れ聞こえてきて、俺は聞き耳を立てる。途切れ途切れの会話。一体何を話しているのだろう。
「――杏子ちゃん、素直になれって」
「私、――好き……かも」
は……?
好き……?
「よし、よく言えた。偉いぞ」
俊介が満面の笑顔で杏子の頭を撫でる。杏子は頬をピンクに染めながら、えへへと笑った。その姿に俺は膝から崩れ落ちそうなくらいショックを受けた。
杏子はもう俺の手を離れたんだ。俺じゃなくても杏子は濡れる。本当は不感症なんて嘘なんだから、杏子が誰を好きになろうが上手くやれる。相手が俊介なのだから、これは喜ばしいことなんじゃないのか。あいつはいいやつだからな。さながら今朝の俊介との会話は、俺への牽制だったのか。
よかったじゃないか、あんなに悩んでたのに俊介の前では楽しそうに笑うんだから。
俺だって最初は杏子を利用したんだ。俺との行為で杏子がイケたから、それで俺も自信がついたはずだろう?
だから別に杏子じゃなくたっていいはずなのに。
それなのにどうしてこんなにも腹が立つのだろう。
『君も、ちゃんと好きな人と結婚した方が幸せになれると思うよ』
さっき御堂桜子に伝えた言葉。そのまま自分の胸に突き刺さった。
俺の幸せはどこかへ消えた。今更気づいても遅いのだ。
俺は杏子が好きでしかたがないのだと。
もっと早くからわかっていたことなのに。