エリート外科医の蕩ける治療
初めて招いてくれた先生のマンションは、外観もエントランスもまるでホテルのようで、おしゃれすぎてキョロキョロと目を奪われた。ホテルっていっても、ラブホじゃなくて、高級ホテルみたいな感じだ。……高級ホテルなんて行ったことないけど。イメージイメージ。

「先生、もしかしてお金持ち?」

「いや、普通」

「普通の基準がこれ? 私の普通の概念が崩壊し始めました」

すごいすごいと騒いでいたら、清島さんがくくっと笑う。どうやら私のお上りさん状態がツボにはまったらしい。むむ、恥ずかしい。

「杏子さぁ、何しに来たかわかってる?」

「わ、わかってますよぅ」

忘れていた緊張が再びよみがえってくる。またドッキンと心臓が騒ぎ出す。この先のことを考えただけでお腹の奥がぎゅんと疼くなんて、私の頭はどうかしているかもしれない。修行が必要だ。

それなのに清島さんとお風呂に入る流れになってしまって、またドキドキが落ち着かない。シャワーを頭からかぶって身を鎮める。

「杏子、何してるの?」

「修行です」

「くくっ、また別の世界に行ってる。じゃあどこまで修行に耐えられるかな?」

「えっ、ひえっ、ひゃあっ」

清島さんの手が私の体を這う。くすぐったさに身がよじれて一瞬で修行が終了した。心頭滅却すれば火もまた涼しとは程遠い。チーン。

「せ、先生ぇ」

「またのぼせたら大変だからな」

清島さんはくくっと笑いながらバスタオルで丁寧に体を拭いてくれる。濡れた髪は甲斐甲斐しくドライヤーをしてくれた。鏡に映る清島さんの引き締まった肉体が目に毒だ。ドキドキが過ぎる。

「先生、私、お姫様みたいです」

「俺のお姫様だから」

真面目な顔をしてそう言うものだから、恥ずかしくなって下を向いた。清島さんの大きな手が繊細に私の髪を撫でていく。気持ちが良くてトロンとした気持ちになった。
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