エリート外科医の蕩ける治療
「トラウマって、お医者さんに相談したら治るものですか?」
「内容によるだろ? 医者だからって何でも治せるわけじゃないからな」
「やっぱりそうですよね」
ダメ元で聞いてみたけれど、思った通りの答えだった。でも本当はずっと治したいとも思ってて……。もし行くとしたら何科に行けばいいんだろう? 精神科? 婦人科? 内科? さっぱりわからない。
「愚痴る?」
「え?」
「あ、いや、解決にはならないかもしれないが、人に話すことでスッキリすることもあるだろ? 特に俺は医者だから、医者に話すことで落ち着くって心もあるだろうしな」
確かにそれはそう。お医者さんってだけで、説得力が増すような安心感が芽生えるような。風邪ひいて辛いときでも、お医者さんに診てもらうとすぐに治るような気がするし。
「……聞いてくれるんですか?」
「まあ、聞くくらいなら」
「素面では言いづらいので、もう一杯飲んでいいですか?」
「構わないよ」
私は店員さんに生中のおかわりを注文する。すぐに運ばれてきたジョッキをぐいっと半分くらいまで一気飲みした。せっかく清島さんが聞いてくれるっていうんだから、聞いてもらおうじゃないか。だってこんなの、誰にも話せないし。病院に行くのも憚られているんだから。
「絶対、笑ったり引かないでくださいね。ちゃんとお医者さんとして聞いてください。私、本気で悩んでいるので」
「ああ、わかったよ」
清島さんは飲んでいたジョッキを置いて、体ごとこちらを向いた。ボックス席でまわりからは見えづらく聞こえにくい。まるで診察室にいるような感覚。清島さんが白衣を着ているような錯覚を起こす。私も体ごと清島さんの方を向いた。
「先生。私、実は不感症なんです」
「え……」
「引かないでって言いました」
「いや、ごめん。引いてない。続けて」
「濡れないんです。不感症で濡れないから、つまらないって言われて、それ以来怖くて誰ともお付き合いできないんです。だってこんなのどうやって治したらいいかわからないし、料理みたいにちょっとやってみようって、試すことだってできないでしょう?」
「まあ、確かに。それは困るな」
「ですよね。先生、どうしたらいいと思いますか? 何かお薬ありませんか?」
「……」
清島さんは困ったように眉間を押さえた。
「内容によるだろ? 医者だからって何でも治せるわけじゃないからな」
「やっぱりそうですよね」
ダメ元で聞いてみたけれど、思った通りの答えだった。でも本当はずっと治したいとも思ってて……。もし行くとしたら何科に行けばいいんだろう? 精神科? 婦人科? 内科? さっぱりわからない。
「愚痴る?」
「え?」
「あ、いや、解決にはならないかもしれないが、人に話すことでスッキリすることもあるだろ? 特に俺は医者だから、医者に話すことで落ち着くって心もあるだろうしな」
確かにそれはそう。お医者さんってだけで、説得力が増すような安心感が芽生えるような。風邪ひいて辛いときでも、お医者さんに診てもらうとすぐに治るような気がするし。
「……聞いてくれるんですか?」
「まあ、聞くくらいなら」
「素面では言いづらいので、もう一杯飲んでいいですか?」
「構わないよ」
私は店員さんに生中のおかわりを注文する。すぐに運ばれてきたジョッキをぐいっと半分くらいまで一気飲みした。せっかく清島さんが聞いてくれるっていうんだから、聞いてもらおうじゃないか。だってこんなの、誰にも話せないし。病院に行くのも憚られているんだから。
「絶対、笑ったり引かないでくださいね。ちゃんとお医者さんとして聞いてください。私、本気で悩んでいるので」
「ああ、わかったよ」
清島さんは飲んでいたジョッキを置いて、体ごとこちらを向いた。ボックス席でまわりからは見えづらく聞こえにくい。まるで診察室にいるような感覚。清島さんが白衣を着ているような錯覚を起こす。私も体ごと清島さんの方を向いた。
「先生。私、実は不感症なんです」
「え……」
「引かないでって言いました」
「いや、ごめん。引いてない。続けて」
「濡れないんです。不感症で濡れないから、つまらないって言われて、それ以来怖くて誰ともお付き合いできないんです。だってこんなのどうやって治したらいいかわからないし、料理みたいにちょっとやってみようって、試すことだってできないでしょう?」
「まあ、確かに。それは困るな」
「ですよね。先生、どうしたらいいと思いますか? 何かお薬ありませんか?」
「……」
清島さんは困ったように眉間を押さえた。