エリート外科医の蕩ける治療
無事に明太子も手に入れ杏子と合流すると、さっきよりも目がキラキラしていた。

「一真さん、試食販売もあるんだって。早く行きましょう」

「手は?」

「繋ぐ」

ぱっと顔を綻ばせ、控えめに出してきた手をしっかりと握る。杏子が購入した角煮は明太子とまとめて俺が持った。そして引きずられるように杏子について回った。

お目当てのものを買い、試食をしては気に入ったものを買う。杏子は終始楽しそうだ。

「あっ、限定ランチだって」

「そういうのもあるんだな」

「食べていきます?」

「杏子が食べたいなら入ろうか」

「ランチ食べたらデザートにたい焼きですよ」

「そういえばそうだった。なんかさっきから食べてばかりじゃないか?」

「それがこのイベントの醍醐味なのです」

声高らかに拳をぐっと握る。結局杏子に付き合って限定ランチも食べ、ソフトクリームがのっているでかいたい焼きを食べ、さらに試食をして大量の食材を買って帰ったのだった。

思わず胃の辺りを押さえる。特に少食というわけではないのだが、今日は久しぶりに食べすぎた感がある。

「一真さん、どうしたの?」

「いや、よく食べたと思って」

「じゃあ運動でもしてお腹減らしますか? 夜も食べるものいっぱいありますよ。あー、幸せだぁ」

ホクホク顔の杏子は終始嬉しそうだ。そういえばたい焼きを食べるとき、「これはカロリーがヤバい」と一瞬顔を青ざめさせ、一口食べた瞬間に蕩けるような笑顔になっていたことを思い出した。そしてペロリと完食。

「くくっ」

「え、何?」

「いや、たい焼きのカロリーどうやって減らす?」

「えーっと、えーっと、ちょっとランニングでもします?」

「じゃあ手っ取り早く」

俺は杏子を引き寄せて、その可愛らしい唇にちゅっと口づける。そのまま服の裾から手を滑り込ませれば、「んっ」と杏子の魅惑的な声が漏れた。

「医学的にセックスは運動行為だよ」

「えっ、そうなの? じゃあ激しいイチャイチャをしたらめちゃくちゃ運動になるってこと?」

「そうかもな。杏子の考える激しいイチャイチャって?」

「うーん、……高速で動く、とか。あ、でもそうすると一真さんしか負荷がかからないような……」

真面目な顔をして、呟いていることがちょっと可笑しい。思わず高速で動く自分の姿を想像してしまい、ぷっと吹き出した。
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