心とりかえっこ

私こと水野沙織は、顔が派手なだけで根は大人しい性格だ。それなのに心まで派手だと思われているようで、所謂サバサバ系女子と認定されている。

だけど私は泣き虫だし、かなり涙脆い。前に告白に失敗した下級生の女子を見て、泣いたことかある。その時に「そんなことで泣くの?」と周りから野次を飛ばされた。

皆が勝手に決めたイメージと違うからって、なぜからかわれないといけないんだろう。

そう言い返したい気持ちはあれど友情に亀裂を走らせたくない。だから私はぐっと涙を堪えて「冗談だよ」と笑ってやり過ごした。その日から私は、学校で一度も泣いていない。涙が出そうになった時はとにかく隠れることを心がけている。

今もそうだ。誰にも見られない場所で涙を流している。ハンカチは持っているが、ほとんど濡れてしまって意味が無い。仕方ないから、左右五本の指を代わる代わる使ってこまめに涙を拭いていく。

「ぴ助ぇ……」

かわいい子だった。いつも私の周りを飛んでおしゃべりしてくれた。教えると何でも吸収するから飽きることがなかった。私の名前を言ってくれた時は感動したなぁ。もっともっと教えたいことがあったし、話したいことがあった。

だけど、もう叶わない。

帰ったらおしゃべりしない冷たいぴ助に会わないといけない。とても耐えられそうにない。

「悲しいなぁ……っ」

大きな涙が一粒がこぼれ落ちた、その時だった。

「こんな所でなにしてんの?」

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