心とりかえっこ

というのも、本人はケンカ大好き不良少年なのだ。あまり授業に出ない、不真面目な生徒。久しぶりに会えたと思ったら、こうやってケンカをしていたりする。

そんな彼が泣き虫だったら大変だ。ケンカになる前に泣きそうだもの。最悪、不良でいられなくなる可能性がある。といっても彼には先生もお手上げらしいから、不良をやめるなら万々歳だろうけど。

それに私も佐々木くんから〝けんかっ早い心〟をもらっても困る。一言に「交換」と言っても課題は山積みだ。

「ってか水野、泣いてる?」
「え」
「涙、顔についてるけど?」
「!」

しまった。佐々木くんに会った衝撃で、泣いていたことを失念していた。

急いで顔を両手で擦る。結構な涙の量がそのまま頬に残っていただったらしく、両手がびちゃびちゃだ。既にハンカチは使い物にならない。この手をどうしようか。

悩んでいると「ん」と佐々木くんから手が伸びる。見ると、彼の手に握られていたのはタオル。

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