心とりかえっこ
佐々木くんの裏の顔
とんでもない放課後を体験してから、一夜が明けた。
起きてもぴ助の鳴き声がしない不思議な朝だ。少しして、ぴ助が死んだことを思い出す。なんと悲しい朝だろう。
「学校、行きたくないな……」
ぴ助のことがあるから気分が上がらないのは当たり前として、それ以前に〝佐々木くんが同じクラスだから行きたくない〟のだ。
彼は出席しない授業があったり、そもそも学校に来なかったりという日がある。それでも同じクラスであれば、会う確率はそこそこ高い。
――たかがペットのインコが死んだだけで泣いたの?
ゾクッ
あの時の佐々木くんの目。何の温度もなかった。色さえ感じなかった。佐々木くんは一ミリも、一粒も、一切れも一欠けらも、何の感情も私に抱かなかった。それを「いっそのこと清々しい」という人もいるだろう。むしろ「無反応でいてくれる方がありがたい」という人だっているはずだ。
だけど私は違う。
少なくとも私は、あの時そんなことを望んでいなかった。
抑えようと思っても溢れる涙を見てせせら笑うのではなく、「大丈夫?」と声をかけてほしかった。慰めてほしかった。
そもそも大前提として、ぴ助を「たかが」なんて言ってほしくないし「ペットのインコ」なんて言葉でまとめてほしくない。私にとってぴ助は姉妹みたいなもので、生まれた時から一緒に過ごしてきた大事な家族なのだ。
「それを赤の他人が、たかが三文字や七文字でぴ助を語るなんて……」
起き立ちの手が白くなるほど、握りしめた拳に力が入る。
眠ったぴ助をあんな風に罵倒する人を、私は絶対に許さない。
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