偽装婚約しませんか!?
 欲望のままパクリと一口頬張り、息を呑んだヴィオラは呻いた。

「ううう。どれもとっても美味しいです! 王都のパティシエは皆さん、一流の腕をお持ちなんですね。ほっぺたが落ちちゃいそう〜」
「……君。俺の話を聞いていたか?」
「もちろん、聞いていますよ。淑女らしさは今度、マナー本で学び直してきます。さあさあ、ローレンスさまも召し上がってください。とんでもなく美味しいので、疲れがぱあっと吹き飛びますよ」

 満面の笑みでお菓子を勧めると、ローレンスはきょとんと目を瞬かせた。それから聞き取れないぐらいかすれた声で何かをつぶやいた。

「…………可愛い」
「今、何かおっしゃいまして?」
「んんっ! いや、何も」
「そうですか」

 その日を境に、ローレンスが婚約者に向ける目は優しくなっていった。

 ◇◆◇

 正直、ローレンスの演技力は大したものだった。
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