偽装婚約しませんか!?
 ヴィオラが彼を好きになっても、この想いが実ることは万に一つもない。偽装婚約という契約が終われば彼のそばにはいられない。そもそも自分は第二王子の妃にはふさわしくない。
 いつかは離れる運命なのだ。一緒にいられるタイムリミットはまだわからない。どれだけの時間が残されているのかは神のみぞ知る。
 けれども、もしそのときが来たら。
 ちゃんと笑って彼の幸せを祈ろう。今までの感謝を伝えて彼のもとを去ろう。ぶっつけ本番だと泣き笑いになってしまいそうだから、今夜から寝る前に鏡の前で練習しよう。自然と微笑んで別れを切り出せるように。
 彼の幸せを願うなら、乙女の涙の出番は必要ないのだから。

 ◇◆◇

 終わりは唐突に訪れた。
 交換留学という名目で転入してきたセリーヌ皇女の前で、ローレンスが婚約者にベタ惚れという演技を続けたおかげで、彼女は早々に見切りをつけた。「あたくしを愛せない男などお呼びではないのですわ!」という捨て台詞を残し、交換留学の期限が来る前に帝国に戻っていった。
 彼女が帰国して一月もしないうちに、帝国から正式な発表があった。
 セリーヌ第一皇女が魔術大国の新王に嫁ぐ、と。
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