偽装婚約しませんか!?
「素直になって、俺の気持ちを受け入れて? ヴィオラは俺が嫌い?」

 自信なさげに苦笑され、心臓がキュッと締めつけられた。
 この人を一人にしてはダメだ。
 ヴィオラは貴族らしい建前をぽーんと放り投げ、心の衝動のままローレンスに飛びついた。力の限り、ぎゅうぎゅうに抱きつく。締めつけると言い換えてもいい。
 苦しいだろうに、ローレンスは何も言わずにヴィオラの背中に腕を回し、昂ぶった感情を落ち着けるようにポンポンと軽く叩く。
 その弾みで情けない涙がポロポロとこぼれ落ち、彼のワイシャツを濡らしていく。

「す……好きですうううう」
「うん。俺も好きだよ。これで晴れて両思いだね。俺と結婚してくれるよね?」
「ひぐっ……今すぐは無理ですけど……。妃教育に合格できた暁には、ローレンスさまの花嫁さんにしてください」
「ふふ。そういう現実的なところも好きだよ」

 目尻に溜まった涙を人差し指ですくい、瞼にそっと口づけが落とされる。
 キャパオーバーで目元を潤ませてローレンスを見上げる。彼はヴィオラの両頬を包み込み、こつんと額を合わせた。至近距離で澄み切ったアイスブルーの瞳が見つめてくる。

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