偽装婚約しませんか!?
 ローレンスは我が国の第二王子、セリーヌは帝国の第一皇女の名前だ。
 深刻な雰囲気で始まった秘密の相談に息が止まった。成りゆきとはいえ、無関係のヴィオラが聞いてしまっていい話では断じてない。

(はわわ、なんてこったい! 目の前の二人、第二王子と従者だったの!? これなら先生に怒られるほうが数倍マシだったよ!)

 乳母が聞いたら「お嬢様。口調が乱れておりますよ」と小言が飛んできただろうが、この場に心の叫びを聞く者も諫める者もいない。
 内心あわあわしていると、ローレンスは深いため息をついた。

「そうは言うがな、セドリック。そんな都合のいい女性が見つかると思うか? もういっそ、潔く諦めたほうがいいのではないか」
「何を弱気なことを言っておられるのですか。あなたはこの国の第二王子。第一皇女殿下と結婚すれば、一生あなたは飼い殺しですよ。それはお嫌でしょう?」
「当たり前だ。俺は年下の女王の下僕になる趣味はない」
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